会社を辞める前にやっておくべきこと15選|退職→独立で後悔しない準備リスト
「いつかは独立したい」「フリーランスになりたい」——そう思いながらも、何から準備すればいいかわからないという方は多いのではないでしょうか。
私自身、会社員からフリーランスエンジニアとして独立した経験がありますが、振り返ると「辞める前にやっておけばよかった…」と後悔したことがいくつもあります。退職してからでは取り返しがつかないこともあるんです。
この記事では、2026年3月時点の最新制度(フリーランス新法・インボイス制度など)を踏まえ、会社を辞める前にやっておくべきこと15選を体験談ベースでまとめました。退職→独立で後悔しないための準備リストとして、ぜひブックマークしてご活用ください。
目次
退職前の社内手続き編(やること1〜3)
まずは会社を辞める前に、社内で済ませておくべき手続きから確認しましょう。ここを怠ると、退職後にトラブルになったり、もらえるはずのお金をもらい損ねたりします。
1. 有給休暇を確認・消化する
退職前に必ず確認しておきたいのが、残っている有給休暇の日数です。有給は労働者の権利であり、退職前にまとめて消化することは法律上まったく問題ありません。
実際のところ、「退職前の有給消化を拒否された」というケースも聞きますが、会社には有給取得を拒否する権利はありません(時季変更権は退職日を超えて行使できないため)。退職届を提出するタイミングと合わせて、有給消化のスケジュールも一緒に伝えるとスムーズです。
ポイントとしては、退職日から逆算して有給消化期間を計画すること。たとえば有給が20日残っていれば、最終出勤日から約1ヶ月は有給期間になります。この期間を独立準備に充てられるのは大きいです。
2. 退職届を適切なタイミングで提出する
法律上は退職の2週間前に申し出ればOK(民法627条)ですが、実務的には1〜2ヶ月前に伝えるのが一般的です。就業規則に「1ヶ月前までに届け出ること」と書かれている会社が多いので、まずは就業規則を確認しましょう。
退職届の提出先は直属の上司が基本です。「退職願」と「退職届」の違いもおさえておきましょう。退職願は「辞めたい」という申し出(撤回可能)、退職届は「辞めます」という通知(原則撤回不可)です。独立の意思が固まっているなら退職届を出すのが確実です。
なお、退職届は手書きでもPCでも有効です。形式より大切なのは、提出した事実を記録に残すこと。コピーを取っておくか、メールで「本日退職届を提出しました」と送っておくと安心です。
3. 業務の引き継ぎを丁寧に行う
引き継ぎは、退職後の人間関係とあなたの評判に直結する大事な作業です。特にフリーランスとして独立する場合、前職の同僚や上司が将来のクライアントや紹介者になる可能性があります。
引き継ぎのコツは以下のとおりです。
- 引き継ぎ資料を文書化する:口頭だけでなく、手順書やマニュアルを残す
- 担当業務の一覧を作る:定常業務・スポット業務・関係者を整理する
- 後任者と並走期間を設ける:最低1〜2週間は一緒に作業する時間を作る
- 取引先への挨拶も忘れずに:後任者を紹介するメールを送る
円満退社は独立後のネットワークづくりの第一歩です。「立つ鳥跡を濁さず」を意識しましょう。
お金の準備編(やること4〜7)
独立で最も不安になるのがお金の問題です。会社員時代は毎月決まった日に給料が振り込まれますが、フリーランスになった瞬間、その安定収入はなくなります。ここでの準備不足が、独立後の焦りや後悔につながります。
4. 生活費6ヶ月分の貯蓄を確保する
フリーランスとして安定するまでには、一般的に3〜6ヶ月かかると言われています。クライアントが見つかっても、請求→入金までに1〜2ヶ月のタイムラグがあるのが普通です。
つまり、独立直後は「仕事があるのにお金が入ってこない」という状態が発生します。この期間を乗り切るためには、最低でも生活費6ヶ月分の貯蓄が必要です。
「生活費」には家賃・光熱費・食費だけでなく、国民健康保険料・国民年金・住民税も含めて計算してください。特に住民税は前年の所得に基づいて課税されるため、退職翌年にドカンと請求が来ます。月々の固定費を洗い出して、6ヶ月分を計算してみましょう。
5. クレジットカード・ローンの審査を通しておく
これは退職前に絶対にやっておくべきことのひとつです。会社員の信用力は、フリーランスになった瞬間に激減します。
具体的にやっておきたいことは以下のとおりです。
- 事業用のクレジットカードを作る:個人の生活費と事業経費を分けるために必須
- 住宅ローンの検討:引っ越しや住宅購入の予定があるなら退職前に審査を通す
- カードの限度額を上げておく:独立後は増枠審査が通りにくくなる
フリーランス1年目は確定申告の実績がないため、金融機関からの信用はほぼゼロに近い状態です。「会社員のうちにカードを作る」は独立の鉄則です。
6. 保険を見直す
会社員時代は社会保険(健康保険・厚生年金)に加入していますが、退職するとこれらの保障がなくなります。特に注目すべきは以下の点です。
- 傷病手当金がなくなる:会社員なら病気やケガで働けなくなっても給与の約2/3が支給されるが、国民健康保険にはこの制度がない
- 労災保険の対象外になる:ただし2024年11月からフリーランスも特別加入が可能に(一部業種)
- 生命保険・医療保険の見直し:収入が不安定になることを前提に、保障内容を再検討する
フリーランスは「自分が倒れたら収入ゼロ」になるリスクがあります。所得補償保険(就業不能保険)への加入も検討しましょう。退職前なら健康状態の告知がしやすく、保険料も有利な場合があります。
7. 退職金・企業型DCの取り扱いを確認する
会社に退職金制度がある場合は、支給額と支給時期を確認しておきましょう。勤続年数によって金額が大きく変わるので、「あと数ヶ月で増額する」というケースもあります。
企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入している場合は、退職後6ヶ月以内にiDeCo(個人型確定拠出年金)への移管手続きが必要です。放置すると国民年金基金連合会に自動移管され、手数料を取られる上に運用もできないという最悪の状態になります。
退職金の税金も重要なポイントです。「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出しておけば、退職所得控除が適用されて税負担が軽くなります。
税務・行政手続き編(やること8〜11)
独立後にスムーズにスタートを切るためには、税務・行政手続きの知識を事前に身につけておくことが重要です。退職後に慌てて調べる人が多いですが、在職中に準備しておけば精神的な余裕がまったく違います。
8. 開業届と青色申告承認申請書を準備する
フリーランスとして事業を始めるなら、開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)と青色申告承認申請書の提出が必要です。
開業届は事業開始日から1ヶ月以内、青色申告承認申請書は事業開始日から2ヶ月以内に税務署へ提出します。青色申告を選択すると、最大65万円の特別控除が受けられるので、必ず申請しましょう。
提出自体は退職後ですが、在職中にやっておくべきことがあります。
- 屋号を決めておく:開業届に記載する屋号は後から変更も可能だが、最初から決めておくと口座開設などがスムーズ
- 事業内容を整理する:開業届の「事業の概要」欄に書く内容を考えておく
- 会計ソフトを選んでおく:freee、マネーフォワード、弥生など。青色申告に対応したクラウド会計ソフトがおすすめ
開業届はe-Taxからオンライン提出も可能です。マイナンバーカードがあれば自宅から完結するので、事前にマイナンバーカードの取得も済ませておきましょう。
9. 健康保険の選択肢を比較する
退職後の健康保険には、主に3つの選択肢があります。
- 国民健康保険(国保):市区町村の窓口で加入。前年の所得に基づいて保険料が決まる
- 任意継続:退職後20日以内に手続きすれば、最長2年間は会社の健康保険を継続できる。保険料は全額自己負担(会社負担分も含む)
- 家族の扶養に入る:配偶者や親が社会保険に加入していれば、年収130万円未満なら扶養に入れる可能性がある
退職前に必ず保険料を比較してください。国保の保険料は自治体によって大きく異なります。自治体のWebサイトや窓口で試算してもらえるので、任意継続の保険料と比べて安い方を選びましょう。
なお、2026年現在、IT系フリーランスが加入できる「文芸美術国民健康保険組合」などの業界団体の国保もあります。保険料が定額で、所得が高い人ほど有利になるケースがあるので、こちらも検討してみてください。
10. 年金の切り替え手続きを把握しておく
会社員は厚生年金に加入していますが、退職すると国民年金(第1号被保険者)に切り替わります。退職日の翌日から14日以内に、市区町村の窓口で手続きが必要です。
国民年金の保険料は2026年度で月額17,510円(2025年度は16,980円)です。厚生年金と違い、将来もらえる年金額は少なくなります。
この年金の「2階建て」部分を補うために、フリーランスには以下の制度があります。
- 国民年金基金:国民年金に上乗せする公的な年金制度
- iDeCo(個人型確定拠出年金):掛金が全額所得控除になる。フリーランスは月額最大68,000円まで拠出可能
- 付加年金:月額400円の追加で将来の年金額が増える(国民年金基金と併用不可)
これらの制度は退職後に加入するものですが、在職中にどれを利用するか方針を決めておくとスムーズです。
11. インボイス制度への対応方針を決める
2023年10月から始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、フリーランスにとって避けて通れない制度です。
簡単に言うと、適格請求書発行事業者(インボイス登録事業者)でないと、取引先が仕入税額控除を受けられなくなります。つまり、登録していないフリーランスは取引で不利になる可能性があるということです。
2026年3月現在、経過措置として登録していない事業者からの仕入れでも80%の控除が認められていますが(2026年9月末まで)、2026年10月からは50%に引き下げられ、2029年10月からは控除ゼロになります。
検討すべきポイントは以下のとおりです。
- 取引先が法人中心なら登録推奨:取引先が消費税の仕入税額控除を必要とするため
- 個人向けビジネスなら未登録でもOK:消費者相手なら仕入税額控除は関係ない
- 2割特例を活用:売上税額の2割を納税額とする簡易な計算方法。2026年分の確定申告まで適用可能
インボイス登録は退職後でも問題ありませんが、方針だけは退職前に決めておくと良いでしょう。
スキル・キャリア準備編(やること12〜14)
退職前の準備はお金や手続きだけではありません。フリーランスとして稼いでいくための土台づくりも並行して進めましょう。会社員時代の環境を活かせるうちにやっておくのがポイントです。
12. スキルの棚卸しをする
フリーランスになると、「あなたは何ができる人ですか?」と常に問われます。会社員時代は肩書きや所属でなんとなく伝わっていたことが、独立すると自分で言語化しなければなりません。
スキルの棚卸しでは、以下を整理しましょう。
- 技術スキル:使える言語・フレームワーク・ツール・資格
- 業務経験:担当した案件の規模・役割・成果
- ソフトスキル:マネジメント・顧客折衝・チームリーダー経験など
- 強みと差別化ポイント:他のフリーランスと比べて自分のユニーク性は何か
これをもとに「自分が提供できる価値」を明確にします。「なんでもできます」は「何もアピールできていない」のと同じです。得意分野を絞ることで、案件獲得の確度が上がります。
13. ポートフォリオ・実績をまとめる
スキルの棚卸しができたら、次は実績の可視化です。エンジニアなら技術ブログやGitHub、デザイナーならポートフォリオサイトなど、第三者に見せられる形で実績をまとめておきましょう。
在職中に準備しておくメリットは大きいです。
- 現在の業務で使える素材がある(NDA範囲内で)
- 同僚にレビューやフィードバックをもらえる
- 精神的に余裕がある状態で作れる
注意点として、会社の機密情報や業務で作成したコードを無断で公開するのはNGです。公開可能な範囲を会社に確認するか、個人プロジェクトで別途作成するのが安全です。
14. 案件獲得ルートを確保する
独立後に最も困るのが「仕事がない」という状態です。退職前から案件獲得のルートを複数確保しておきましょう。
- フリーランスエージェントに登録する:レバテック、PE-BANK、Midworksなどの大手エージェントに事前登録しておけば、退職後すぐに案件を紹介してもらえる
- 知人・前職の人脈を整理する:独立の挨拶を兼ねて連絡を取り、「こういう仕事を受けます」と伝えておく
- SNS・ブログで発信を始める:X(旧Twitter)やQiitaなどで技術発信を始め、認知を広げる
- クラウドソーシングにも登録しておく:CrowdWorks、ランサーズなどは実績づくりに有効
理想は、退職前に最初の案件を確定させておくことです。副業OKの会社なら、退職前に副業として小さな案件を受けてみるのもおすすめです。フリーランスの仕事の流れ(見積もり→契約→作業→請求→入金)を体験しておくことで、独立後の不安が大きく減ります。
法制度の理解編(やること15)
15. フリーランス新法(フリーランス保護法)を理解する
2024年11月に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、通称フリーランス新法(フリーランス保護法)は、フリーランスとして働くなら必ず知っておくべき法律です。
この法律のポイントは以下のとおりです。
- 書面等による取引条件の明示義務:発注者はフリーランスに対して、業務内容・報酬・支払期日などを書面やメールで明示する義務がある
- 報酬の支払期日:発注者は、納品日から60日以内に報酬を支払わなければならない
- 禁止行為:受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたきなどが禁止
- ハラスメント対策:発注者はハラスメント防止のための体制整備が義務化
- 中途解約の事前予告:継続的な業務委託(6ヶ月以上)の解約は、30日前までの予告が必要
この法律のおかげで、フリーランスの立場は以前より法的に保護されるようになりました。ただし、自分で権利を主張できなければ意味がありません。法律の内容を理解し、契約書のチェックポイントを把握しておきましょう。
違反があった場合は、公正取引委員会や厚生労働省に申告することができます。フリーランス・トラブル110番(0120-532-110)という無料相談窓口も活用できます。
退職後すぐにやることリスト
最後に、退職後すぐにやるべきことをまとめておきます。退職日を迎えたら、以下を速やかに進めてください。
- 国民健康保険への加入(退職日の翌日から14日以内)※任意継続の場合は20日以内
- 国民年金への切り替え(退職日の翌日から14日以内)
- 開業届の提出(事業開始日から1ヶ月以内)
- 青色申告承認申請書の提出(事業開始日から2ヶ月以内)
- 事業用銀行口座の開設(屋号付き口座がおすすめ)
- 会計ソフトの導入・初期設定
- 小規模企業共済への加入(フリーランスの退職金制度。掛金が全額所得控除になる)
- iDeCoへの移管・加入手続き
特に小規模企業共済は、フリーランスにとっての退職金制度として非常に優れています。月額1,000円〜70,000円まで自由に設定でき、掛金が全額所得控除になるため、節税効果が大きいです。独立後すぐに加入することをおすすめします。
まとめ:準備が9割。辞める前の行動が独立の成否を決める
会社を辞めてフリーランスになることは、大きな決断です。しかし、「勢いで辞めてしまった」という人と「計画的に準備して辞めた」という人では、独立後の安定感がまったく違います。
今回紹介した15項目をまとめると、以下のようになります。
- 有給休暇を確認・消化する
- 退職届を適切なタイミングで提出する
- 業務の引き継ぎを丁寧に行う
- 生活費6ヶ月分の貯蓄を確保する
- クレジットカード・ローンの審査を通しておく
- 保険を見直す
- 退職金・企業型DCの取り扱いを確認する
- 開業届と青色申告承認申請書を準備する
- 健康保険の選択肢を比較する
- 年金の切り替え手続きを把握しておく
- インボイス制度への対応方針を決める
- スキルの棚卸しをする
- ポートフォリオ・実績をまとめる
- 案件獲得ルートを確保する
- フリーランス新法を理解する
退職前の準備期間は、いわば「助走」のようなもの。しっかり助走をつければ、独立というジャンプも安定して着地できます。焦らず、一つひとつ確実にクリアしていきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 退職前に副業でフリーランスの仕事を始めても大丈夫ですか?
A. 会社の就業規則で副業が禁止されていなければ問題ありません。2026年現在、多くの企業が副業を解禁しています。ただし、競業避止義務に抵触しないか(同業他社の仕事を受けないか)は必ず確認してください。不安な場合は、上司や人事に相談するのが安全です。
Q. 貯蓄が少なくても独立できますか?
A. 可能ですが、リスクは高くなります。最低でも生活費3ヶ月分は確保することをおすすめします。それが難しい場合は、退職前に副業で案件を確定させておく、または退職後にアルバイトをしながら案件を増やしていく方法もあります。焦って安い案件を受けるくらいなら、準備期間を延ばす方が長期的にはプラスです。
Q. フリーランスエンジニアの案件はどうやって探せばいいですか?
A. 主な方法は4つです。(1) フリーランスエージェント(レバテック、PE-BANKなど)への登録、(2) 知人・前職からの紹介、(3) SNSやブログでの発信経由、(4) クラウドソーシング(CrowdWorks、ランサーズ等)です。最初はエージェント経由が安定しやすいですが、長期的には直接契約の比率を増やしていくのが収入アップのコツです。